【漫画】ゴトウユキコ『36度』辛い過去を背負った漫画家にとっての「救い」とは?
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漫画制作に呪われた者にとっての「救い」とは?
主人公である32歳の女性漫画家は、担当替えで長年付き合いのあった女性編集者と別れることとなる。新しく担当に付いたのは、29歳のイケメン編集者。
主人公はその編集者に好意を寄せ、肉体関係を結ぶが、最終的にひどい仕打ちを受けて離れることとなる。
しかし、彼女はこの別れによって、彼との思い出、そして今までの辛い過去とも向き合うようになる。その向き合い方とは、「みっともなくてださくてカッコ悪い」過去を、漫画のネタとして昇華することである。
あとがきで漫画家はこう語る。「思い出したくない苦い思い出ばかりで、それらがいつまでたっても無間地獄みたいに頭の中で繰り返し思い出されることがある」と。それを同業者に相談すると、「それだけ漫画のネタがあるってことじゃない、全部漫画にしたらいい」と返されたという。
このエピソードは本作と重なる部分も多い。物語の漫画家を通して、作者は自身の辛い過去を肯定しているようにも映る。
モノで表現する者は、モノで過去を表現することでしか、その呪縛から逃れることはできないのだろう。それは「呪い」であると同時に、「救い」でもあるのかもしれない。