市川優の短編書房

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【漫画/書評】ふみふみこ『女の穴』二つの穴を巡る物語が生み出す多様な解釈

ふみふみこ『女の穴』(徳間書店

 

本作において「穴」とは「目」を意味する。

男性教師は、クラス内のある女子高生の目が「ぽっかり空いた穴みたいでなんかこわい」と思う。そして、女子高生は彼にこう打ち明ける。「わたし異星人なんですよ」と。

彼女は子どもを作る命令を受けており、その目的を果たすために教師に性交渉を要求する。彼はその要求に応えることになる。

ここでもう一つの穴が現れた。それは、女性の性器である。

精神科医フロイトは「女性の性器は、空な腔洞があってなにものかを容れることができるという性質を備えたすべての対象によって象徴的に表現されます」と語っている。

だが、この穴を埋めたところでもう一つの象徴である「目」は以前として穴のままである。彼女は卒業し、彼のもとを離れてしまう。

そしてある日、彼は彼女に急に呼び出される。向かった先で彼が見たものは、赤ん坊を抱く彼女の姿だった。

その時の彼女の目は、穴ではなくなっていた。

彼女が出産を経て母親という存在になったからか、彼自身が父親となったことで彼女の姿が新たな形で見えたからだろうか。あるいは、その両方か。

穴を巡る男女の物語として読むと、そこには様々な解釈の可能性が広がっている。