【漫画/書評】寺田克也『ラクダが笑う ファイナル・カット』男が悲しむのは、男の死だけ
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暴力、セックス、金。B級エンターテインメントの要素がたっぷりと詰まった1作である。
主人公の男ラクダはとんでもないチンピラであり、巻き込まれた様々な事件を圧倒的な暴力で解決していく。その過程において、男女問わず多くの死者が毎回出ることになるが――。
キャラクターの造形や明暗を強調した背景、効果音の書体などの絵の要素のほか、直線的なストーリー構造も兼ね備えた本作はどこかアメリカン・コミックスを彷彿とさせる。
また、アメリカ的だと考えられる要素として、主人公ラクダが持つ男と女に対する感情の違いも挙げられるだろう。
ラクダは、女だけでなく男とも肉体関係を持つ。そして、その男やその女は死んでしまう場合が多い。
ただ、ラクダがその死を悲しむのは、必ず男だけである。
アメリカ発の物語は、これまでも数多くのものが、「男だけの集団に女が現れて混乱を招く」といった定型的な説話原型で作られてきた。要するにそれは「男だけで生きることの美しさ」を描いてきたのだ。
本作では、いかにもアメリカらしい漫画を作るためにあえて意図的にこの要素を取り入れたように感じる。こうした物語に潜む文化的な側面も鋭く分析していたからなのだろう。