【漫画/書評】岸虎次郎『冗談だよ、バカだな』友情から恋愛・異性愛から同性愛の揺らぎ
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相反するものを持っている者の存在によって、自分の中の相反するものが揺さぶられる。
イケメン男子トモと女性のように美しい男アサは中学の同級生。ある日の体育の授業で、トモはアサの上半身裸と性器を偶然見てしまう。
トモはその時の情報をもとにしてアサの裸体を想像し、授業中になぜだかぼっ起してしまう。そして、トモは帰りの電車であるゲームをアサに提案する。
友情が恋愛へと変わるかもしれない、異性ではなく同性を好きになるかもしれないという二重の揺らぎが本作では描かれている。そして、その揺らぎはそうなる可能性もそうならない可能性も含んだまま物語は閉じる。
面白いのはそうした感情をトモが抱いたのが、彼の身体の一部を見たことにある点だろう。二人とも男性であるのだから、アサの身体に自分と同じ身体のパーツがあることは想定できるはずだ。
であるならば、身体を目撃する前の、女性のように美しい顔をしているという情報だけを知っている時の方が、異性愛者としては恋愛感情を抱く対象になりやすいように感じる。
しかし、彼はそうではなかった。美しい顔であるという女性的な部分と、自分と同じ身体であるという男性的な部分を知ることで、トモは初めてアサに恋愛感情のようなものを抱くのである。