市川優の短編書房

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【漫画/雑記】尾田栄一郎『ONE PIECE』期間限定で61巻まで無料なのでちょっと読んでみた

尾田栄一郎ONE PIECE』(集英社

 

時は大海賊時代。いまや伝説の海賊王G・ロジャーの遺した『ひとつなぎの大秘宝』を巡って、幾人もの海賊達が戦っていた。そんな海賊に憧れる少年ルフィは、海賊王目指して大いなる旅に出る!!

 

 

総合電子書店「ゼブラック」で 5月31日(日)までの期間限定で『ONE PIECE』が61巻まで無料で読めるようなので試しに読んでみた。

スラスラと読めて非常にわかりやすい。長年にわたって多くの人に支持され続けているのもなんとなく理解できる気がする。

でも、なぜ、わかりやすいと感じるのだろうか。

 

一つは見せ場がどこにあるかが、しっかりと示されている点であろう。

ここぞという場面で「ドン!!」といった効果音の文字とともに、人物のクロースアップが描かれることが多い。これは歌舞伎の「見得」に近いものを感じる。

作品内の時間の流れを停止した状態にし、キャラクターの感情の高ぶりをコマで読者にじっくりと見せつける。

「ドン!!」といった効果音などは、見得の際に打たれる「ツケ」の役割にも似ている。ちなみに『ONE PIECE』自体も過去に舞台として歌舞伎化されたことがあり、2つの間に通ずるものがあると感じた人も多かったのだろう。

 

他には、キャラクターが過剰に喋る、という点もある。

本作のメインとなる登場人物たちは、決意や仲間への思いなどをほぼ言葉として発する。彼らはその感情を胸の内に留めないのだ。

私たちは他者のことを理解しようとする時、他者が発する言葉を一つの情報として捉える。しかし、その言葉は彼らの一部分にしか過ぎない。なぜなら彼らは発していない無数の言葉を心に秘めているからだ。

それに比べると、『ONE PIECE』のキャラクターたちは多弁だ。自分の感情や思いをできるだけ言語化しようとしている。

そして、それらの情報はキャラクターの性格を読者に理解させる働きを果たす。「きっとルフィならこの時こう思うだろう」「きっとルフィならこの時こう言うだろう」などと物語が進むごとにある程度の予測ができるようになっていく。

自分の全てを外部に発信するキャラクターたちだからこそ、読者は彼らに強く惹かれるのだろう。そこには自分が唯一理解できるかもしれない他者が存在しているのだから。

おだ・えいいちろう

1975年熊本市生まれ。92年『WANTED!』でデビュー。97年から海賊たちの活躍を描いた『ONE PIECE』を連載。