市川優の短編書房

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【漫画】平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』友との記憶に向き合い、自分のトラウマを乗り越える

平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』(KADOKAWA

 

亡くなった女友達の遺骨とともに、彼女との記憶の旅に出かける。そうした物語を荒々しく、そして繊細に描いた平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』(KADOKAWA)。

主人公の女性シイノは、友人のマリコが亡くなったニュースを見て、マリコのろくでもない父親から彼女の遺骨を奪う。そして、シイノはマリコがかつて行きたがっていた海をめざし、遺骨とともに旅に出かける。

物語の序盤では、シイノが知るマリコが幼い頃に虐げられた同情的なエピソードが続く。だが、後半に進むにつれ、マリコのもう一つの側面であった暗い部分も取り上げらるようになる。シイノとマリコの関係が全て良好だったとはいえないことがうっすらとわかっていく。

そんなマリコに対して、シイノは答えをずっと出せないでいたが、目的地に到着した時、「マリコあんた何も悪かない」とシイノは語りかける。

そして、次の場面。その場に偶然居合わせ、ひったくり犯に追われている学生を助ける。シイノの眼には、助けを求める学生の姿がマリコと重なっているように見えていた。

記憶の中に眠る友人の姿に向き合い、そして架空の彼女を救う。生前に本当の意味で友人と向き合うことができなかった、シイノ自身のトラウマを克服する物語に映る。