書評
萩尾望都『トーマの心臓』(小学館) // リンク 冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。トーマ・ヴェルナー。そして、ユーリに残された1通の手紙。「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオス…
浅野いにお『虹ヶ原ホログラフ』(太田出版) // リンク 過去と現実、そして夢が交錯した複雑なストーリー構成。 同じ地点に同一の登場人物が存在するといった時間SFの要素。 牛の体と人間の顔を持つ妖怪「件」や、怪物の存在を象徴する「蝶」といった超自然…
高橋源一郎『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』(集英社)より 『ガドルフの百合』 // リンク 宮沢賢治の作品タイトルを原題のまま使い、小説家が独自の新たな世界を構築した物語群の1つである。 主人公のガドルフはホテルのような部屋のベッドで目を覚…
岸虎次郎『岸虎次郎作品集 冗談だよ、バカだな』(太田出版) // リンク 相反するものを持っている者の存在によって、自分の中の相反するものが揺さぶられる。 イケメン男子トモと女性のように美しい男アサは中学の同級生。ある日の体育の授業で、トモはアサ…
岡崎京子『ヘルタースケルター』(祥伝社) // リンク 私の姿を形作るのは、他者の欲望である。 カリスマ的な魅力を持つ女性りりこは、モデルやタレント、女優として絶大な人気を誇っていた。しかし、彼女の美貌には秘密がある。それは、その美しさが整形で…
マッチロ『BIBLIOMANIA』(おおばる脚本、コミックダイス) // リンク 内側の世界に閉じこもるのと、外側の世界に飛び出していくのとでは、どちらがより幸福になれるのであろうか。 少女アリスは目が覚めると真っ白の空間にいた。そこで「ヘビ」と名乗る怪物…
志村貴子『志村貴子作品集 かわいい悪魔』(太田出版) // リンク 魔女についての解釈がなかなか面白い。この漫画家にとって魔女とは、日常に溶け込む存在なのである。 ある日、男の子は若い女性の姿をした魔女と出会う。そして彼女は、男の子の家族の一員や…
平山夢明『暗くて静かでロックな娘』(集英社) // リンク 大切な人の存在を認識させるモノとは何か。 男はある女と出会う。彼女は目も見えず、耳も聞こえないのだが、彼の香りに強く反応して彼の腕に抱きついた。そこから二人の物語は始まる。 彼女は彼女の…