【漫画】田中圭一『田中圭一最低漫画全集 神罰1.1』シュールな下ネタ、漫画の神様味
田中圭一『田中圭一最低漫画全集 神罰1.1』(イースト・プレス)
リンク
漫画家・手塚治虫をメインにしたパロディ漫画だ。ネタは基本的に下ネタばかりであるが、作風の再現度は非常に高い。イラストだけでなく、コマ割りや書き文字などの要素も模倣されている。
パロディではあるが、原作の有名キャラクターはあまり登場せず、なんとなく見たことのあるような、絶妙なラインの脇役風キャラクターが数多く出てくる。
手塚のイラストが持つほのかなエロの要素をこれでもかと活用さらに誇張し、シュールな下ネタの世界観を構築する。ここまで振り切ってやれるのは、原作者への深いリスペクトがあってからこそだろう。
巻末にあるしりあがり寿との対談で、田中はしりあがりが以前に挑戦したパロディを引き合いに出し、「元の作品作風と中身のストーリーとかシチュエーションが、ミスマッチであればあるほど面白い」と語る。そして、「自分の絵柄を変えようってときに、どうせなら神様手塚先生でいこうと」と、マンガ記号の一つの大きな枠に挑んだのである。
個人的にはあとがき漫画にある、手塚漫画を愛する初老の女性が絵柄だけを見て、この漫画を購入してお礼を述べて去っていくエピソードも笑えた。この女性がこの作品をその後読んでどんな感想を抱いたか。気になるような、気にならないような。