市川優の短編書房

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【漫画】コナリミサト『恋する二日酔い』お酒が彩る13人(?)の女性の物語

コナリミサト『恋する二日酔い』(イースト・プレス

 

悲しいとき、嬉しいとき、辛いとき、楽しいとき。そんな人生の一場面をお酒とともに過ごす人も多いことだろう。

本作にはビールが物語に絡んだ13の短編がそろう。どの物語にも、冒頭の短編で描かれた新発売のビール「ピンクビールアワー」が登場。各話の女性主人公たちは、恋や人生、本当の自分など、それぞれに葛藤を抱える。彼女らは悩みに向き合い、そして訪れた節目にふと寄り添ったのがこのビールである。

最後の短編は一見、この作品の中で唯一の男性の物語にも見えるが、よく読むと女性に擬人化したビールが主人公であることがわかる。彼女は女運のないこの男を常に冷蔵庫の中で心配している。

そして、「女の姿になって冷蔵庫で毎夜あなたを迎えたい」と叶わぬ願望を抱く。しかし、彼のことを本当に思う女性が現れたことで、彼女はひっそりと身を引く。

女性の内面の微妙な変化を描いた作品群の中に、女性化したビールを主人公にした短編を最後に持ってくるセンスが良い。作者が世を生きる女性たちをこよなく愛し、そしてビールをも深く愛していることがひしひしと伝わってくる。