【漫画】よしながふみ『愛すべき娘たち』男だけではなく、女も女のことがわからない?
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男は女のことがわかっていない。確かにそうかもしれない。ただ、女も女のことをわかっていないのではないだろうか。
そんな漫画家からの問いかけを感じた本作の短編は、そのどれもが女性を軸にした物語で構成されている。
「母から卒業できない社会人」「恋をすることができない独身女性」「祖母から”呪い”をかけられた母」などが描かれる。
物語の展開は比較的緩やかであり、一見退屈に感じてしまうかもしれない。ただ、キャラクターの発するセリフや表情の豊かさ。さらに、人物が持つ複雑な内面をあえて単純化することなく、複雑なまま読者に提示した奥深さ。この2つの要素が絡み合うことで生まれた圧倒的な心理描写に思わず引き込まれてしまう。
彼女らの内には善と悪のような単純な二項対立ではなく、矛盾や対立を抱える複数の概念が存在しており、時々その内側を垣間見せる。
彼女らがふと見せるその姿は、きっと女性だけ見ることができ、そして発見できるものなのだろう。ただ、発見したとしても理解することはできない。それは、女の謎なのである。