市川優の短編書房

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【漫画】西村ツチカ『さよーならみなさん』心奪われる絵と不条理でユーモラスな物語

西村ツチカ『さよーならみなさん』(小学館

 

漫画を表紙買いすることがある。ふと目に飛び込んできた絵に、心を奪われて。

本作もそう。キザギザと何度も書き込まれた背景、強調するために極端に歪められた構図にやられた。

どこか絵本のような雰囲気を感じるが、陰影を巧みに利用しており、きわめて漫画的でもある。

ストーリーも絵に負けず、独特だ。主人公の女子高校生が、「満員電車で騒ぐクラスメイト」「森の中で補講する教師」「寝ぐせで悩む下級生」など一癖も二癖もある男たちと出会う。

そんな彼らに女子高生は振り回されたり、振り回されなかったりしながら話は進んでいく。『不思議の国のアリス』のような不条理かつユーモラスな世界観がたまらない。