【小説】アンドルー・ラング編『マスターメイド』マイナスからプラスへと導く、旅の効果
アンドルー・ラング編『アンドルー・ラング世界童話集第1巻 あおいろの童話集』(西村醇子監修、杉本詠美ほか訳、東京創元社)より
『マスターメイド』
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人が旅に出る形式の物語はよくある。旅に出ることで未知の世界に触れ、再び以前いた場所へと帰還することで成功を収めるのだ。
本作で旅に出かけるのは、王子だ。彼は旅先の館で巨人の召使いとなり、そこで「マスターメイド」と呼ばれる美しい娘と出会う。
王子は娘とともに巨人から逃亡し、城へと帰ろうとする。城へと帰還できたあかつきには、娘を花嫁にする予定であった。しかし、あるリンゴを一口かじると、その約束を忘れてしまい――。
最終的に王子は約束を思い出し、無事に彼女と結ばれることになる。
王子は異世界へと旅立ち、そしてその成果として娘を自身の日常に連れて帰る。そして、花嫁のいないマイナスの状態から、プラスの状態へと移行するのだ。
物語がハッピーエンドを迎える前には、王子に問題のリンゴを食べさせたトロルの魔女が「二十四頭の馬につないでひきさかれ」る。
こうした厳しい処罰によって物語における悪を成敗し、物語は秩序を取り戻すのである。