市川優の短編書房

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【漫画】高橋留美子『運命の鳥』もし他人が不幸になる未来が見えたらどうする?

高橋留美子高橋留美子傑作集 運命の鳥』(小学館)より

『運命の鳥』

 

他人の未来が見えるとしたら、自分は何を考え、そしてどう行動するだろうか。

主人公である喫茶店のマスターは、小学生の時以来、人に鳥が付いているのを見えるようになる。男はそれを「運命の鳥」と呼び、その鳥が付くとその人に何かしらの不幸が訪れるという。

高校2年生の時、クラスのマドンナ的存在に鳥が付いていた。彼女が駆け落ちをしようとした日、勇気を振り絞って止めようとしたが、その願いは叶わなかった。

それ以来、自分の無力さを思い知り、できるだけ他人に干渉しないよう生きてきた。だが、ある日、彼女に似た学生が鳥を付けて店を訪れ――。

物語の鍵となる不幸を招く鳥は、幸福の象徴とされる「青い鳥」とは対照的に赤色である。この鳥の数によって、どうやら不幸の大きさは変わってくるようだ。

主人公は現在を通じて過去と向き合う。かつて愛する女性を救えず、自身の無力を思い知らされた男が、同じような女性を前にして一体どう行動するのか。

運命は意思で良い方向へと導くことができる。そして、人はきっかけさえあればいつでも変われる。漫画家は作品に乗せて、こうしたメッセージとともにエールを読者に向けて送っているように感じる。