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【漫画/書評】中村明日美子『曲がり角のボクら』恋愛青春漫画における王道からの逸脱

中村明日美子『曲がり角のボクら』(白泉社

 

高校生たちの恋愛青春漫画といえば、少しありきたりな印象を受けることだろう。だが、やや複雑な恋愛関係と役割を加えることで物語は広がりを見せる。

男女4人の高校生がメインとなる登場人物である。そのうちの一人の男子が、「学園祭前に告白して後夜祭でフォークダンスを一緒に踊るとそのカップルは永遠に結ばれる」という伝説と男同士の賭けをきっかけにして、一人の女子に告白する。

しかし、最終的に彼女は彼ではなく、彼の親友への思いを告白し、そちらと結ばれることになる。

二人が結ばれる以前には、親友は男の恋愛を応援する、いわば支援者的な立場であった。だが、彼女が親友への思いを告白したことで急に立場は逆転し、男が親友の恋愛を応援する支援者的な立場になる。

この突如起きた主人公と脇役の立場の逆転を見事に描くことで、恋愛の難しさを巧みに表現しているように感じる。

また、もう一人の女子の設定も良い。彼女は男のヒロインへのアプローチを妨害するキャラクターとして描かれている。彼が軟派な性格であり、ヒロインにはふさわしくないというのが邪魔をする理由であった。

ただ、それは建前であり、彼女自身もヒロインに恋心を抱いていたのである。

普通、恋愛青春漫画において男女を2人ずつ物語上に配置した場合、男女の恋愛関係のみを描くことが多いだろう。だが、本作ではそこに女同士の恋愛の要素を絡め、王道とは違う物語の可能性を見せるのだ。